徒然なるままに…。

自由に気ままに綴ります

2019年小説ベスト10

小説にはあらゆるモノの全てが表現されている

それらに触れ自分の中の倫理観や価値観がアップデートされていくのは堪らなく心地良い

もちろん娯楽としても最高に楽しい

 

今年は年間114冊の小説を読みました

 

世の中には本当に色々な作風の作家さんやジャンルや表現があるんですね

 

小説を知れば知るほど

知らない小説があることを知ります

『幸せの無限ループですね』

 

 

 

 

それでは2019年小説ベスト10の発表です

 

 

 

 

 

 

 

一位

『ことり』小川洋子

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【静寂のさえずり】


あまりにも無垢な心

それ故の疎外と孤独

無慈悲なモノと決別し

長閑で争いのない世界

清白な主人公のように

ささやかな日常を歩めたら

とても幸福な生涯だと思う

至福の彩りに溺れた


人生の最期の一冊は

この物語を読んで呼吸を終えたい🦜

 

 

時間や空間や時代や場所など全てが神秘的で不透明なにの何か懐かしさのような感覚を覚えた

 

読み終えた後、『これは小説という表現を超越した小説表現の最終形だ』と思った

この一位はかなり個人的な順位だと思います

母親のお腹の中にいるような浮遊感でした

 

皆さん。死ぬ前に一冊小説を読めるとしたら何を読みますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

二位

サラバ!西加奈子

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【最高傑作】


性別。言語。国籍。思想。時間。哲学。信仰。人間。


絶望。苦悩。羞恥。孤独。尊厳。軽蔑。嫉妬。空虚。希望。


《人間の業》と《人生の糧》が凝縮


全身の細胞が湧き踊り

人生観が刺激された


こんな素晴らしい作品に出会う為に

俺は小説を読んでいる!

 

 

すべての《業》が表現されていました

実はこの小説は一年ぐらい前からずっと《読みたい&読まなきゃ》と思っていた一冊でした

長編大作という事もあり、なかなか手に取れなかった小説

本当に読んで良かったです。

実質この小説がNo. 1と言ってもいいです

これを読んでいる『サラバ!』未読の皆さん。

絶対に読んだ方がいいですよ!

死ぬまでには絶対読んでみて下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三位

かがみの孤城辻村深月

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【パーフェクト】

 

小説を読んでこんな気持ちになれるのは年に数回あればいいです

 

希望に溢れ、勇気をもらえ、最大限の愛に満たされた物語でした

 

『ありがとう』という言葉しか出てきません。素晴らしい出会いに感謝です

 

 

ほんわかした小説が苦手な自分にとって

辻村深月さんという作家さんは正直あまり良い印象ではなかったです

半信半疑で読んでみたら、そんな偏見は数ページでぶっ飛んでいきました

『早く家に帰って読みたい』『遊ぶ約束はなるべく断ろう』

という読書欲が今年1番湧き上がるった小説でもありました

『完璧な物語』ってあるんですね笑

誰でも楽しめる小説なので是非!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四位

『告白』湊かなえ

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我が子を生徒に殺された女教師

 

復讐。復讐。復讐。復讐。

 

最愛の人を奪われた人間の憎悪は

ここまで容赦なく相手を痛めつけられるものかと身震いした

 

執拗に相手の精神を追い詰めていき

ラストは美しさすら感じる非道な復讐劇に魅了された

 

最低に素晴らしい作品でした

 

あまりにも有名な小説ですよね

映画は観て知ってしましたが小説は未読でした

表現の自由の限界まで切れ込んだヒリヒリ感が堪らなかった

湊かなえ作品が苦手。イヤミスというジャンルが苦手。

という人は少なくないと思いますが

この小説は全く別物だと思っていいです

本当に面白かった

デビュー作品って作家さんの本質や熱量が最大限に詰まっていて好きです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五位

『掏摸』中村文則

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【完全無欠】


天才スリ師が極悪な男と再会し転落していく物語


圧倒的な権力に運命を囚われた人間の絶望感


リアルな心中描写が物語をスリリングに加速させていく


中村文則さんを未読の方は絶対オススメの一冊です


パーフェクトな小説に出会うと無敵な気分になれる

 

 

暗くて陰湿で人間の暗部を徹底的に掘り下げそれを露呈する作風の中村文則さんは1番好きな作家さんです

中村文則さんの小説は発行順に読んでいますが

この作品から、かなり物語を重視した構成で読みやすくなっています

ですがパワーのある文章の《中村節》は要所要所に詰め込まれていて

本の長さも含め中村文則入門編に最適かと思います

かなり好き嫌いの分かれる作家さんですが中村文則中毒者が増えたら個人的には嬉しいです

 

ちなみに去年の年間1位は中村文則さんの『銃』でした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六位

悲しみよこんにちはサガン  

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【Très bien 素晴らしい】


ストーリー。登場人物。会話。空気感


冒頭から結末まで文句なし!


なぜこんな名作を読まなかったのか

もっと早くに出会いたかった


でもいま出会えたから

こんなに感動できたとも思う傑作


メルシー!サガン

 

 

風景。会話。空気感。テンポ。

自分の好みのリズムに完全にマッチした小説でした

フランス映画が好きな自分にとって皮肉や粋な行動や会話は心地良かった

読後にサガンウィキペディアで調べたら壮絶な人生を送っている作家だという事を知り

また好きになってしまった

太宰治もそうだけど生き様を小説にぶつける作家さんは好きです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七位

アルジャーノンに花束をダニエル・キイス

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知的障害のある主人公が手術で天才的な知能を手に入れる物語

 

知性を得ることで人間の嫌な部分を知ったり

傲慢になり他人を見下し孤独になる

そしてラストは…

 

無知と博識はどちらが幸せなのか?

 

愛と人間の業が詰まった今年ベスト級の小説でした

 

 

『最高のストーリー』これに尽きる

今年のストーリー部門1位の小説です

自分の知る限りこの作品に似た物語を知らない

それだけこの小説が圧倒的に優れていてパーフェクトだからだと思う

鈍感な人間と敏感な人間はどっちが幸せなんでしょうかね?

せつなすぎる。あまりにも刹那い。

感動の小説です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八位

地下室の手記ドストエフスキー

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己の自意識を極限まで掘り下げる自問自答に美しさを感じた


『人間に必要なのは自分独自の恣欲である』

自然法則からくる人間構造に納得


気鬱で合理性を求めてしまう自分にとっては《麻薬》のような危ない手記でした


※超絶に暗いので要注意

 

 

恥ずかしい話たがこの小説を読んでまず思ったのが

『この作品は自分の事が書いてある』と思ってしまった

ここからは余談ですが、自分はかつて自意識過剰が爆発し過ぎて苦しい時代があった

他人の目を気にし過ぎてなにも出来ない状態

そうなると次第に人と関わるのが嫌になって家から出られなくなってしまう

人間が嫌で嫌でたまらなかった

そして何よりも自分が嫌で嫌で嫌でたまらなかった

 

そんな生活を送っている唯一のメリットは『時間が大量にある』という事だ

そのときに自分は《小説》という素晴らしい表現(現実逃避)に出会った

今思うとこの出会いは本当にラッキーな事だったと思う

そんな暗黒の時代があったから今の自分があるといってもいい

(この時期に太宰治を全作品読みました)

地下室の手記はたぶん人生を楽しく生きてる人には理解不能な小説だと思います

そんな明と暗が露呈される《踏み絵》のような暗い小説です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九位

『地球星人』村田沙耶香

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非常識でぶっ飛んだ話でストーリーが展開するにつれ

脳内の非常識が徐々に常識に変化する

 

中盤から終盤へかけて忌まわしく荒れ狂う暴走劇は笑いながら読み終えてしまった

 

ポハピピンポボピア星人に共感と憧れを感じました

 

 

普通と狂気が混同した唯一無二の作家さん

前半は『なんて退屈な小説なんだ』と思った

中盤から『アレ?もしかして?凄いことになる?』

終盤は『おぉ大好き!もう好きにしてくれ!』

読後は『やってくれたな!最高じゃねーか!バカヤロー!』って感じでした

表現のリミッターが限界まで達し、それが外れた後の暴走劇は清々しいほど楽しめた

村田沙耶香さん恐ろしいです!クレイジーです!大好きです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十位

砂の女安部公房

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【無形の流砂】


砂穴にある一軒家に閉じ込められた男が脱出を試みる


安全で満たされた生活は自由なのか

監禁されても《生きる糧》がある方が自由ではないのか


思慮深い論題


『砂』という掴み処のない物質を使い

人間の業を説いた寓話的な小説


著者の心的傾向に同感

 

 

箱男』でも感じましたが、この作家さんの着眼点や発想は大好きです

 

もし今の時代に生きてたら小説家ではなく

コメディ作家になって面白いコントを書いほしい

それくらいユーモアに溢れる作家さんだと思う

頭脳明晰でミステリアスな人間から発せられるユーモアは反則ですね笑

自分もそんな男に憧れます

ギャップを感じる大好きな作家さんです

 

 

 

 

 

ベスト11〜20です

 

11土の中の子供/中村文則

12きりぎりす/太宰治

13すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

14最後の命/中村文則

15変身/カフカ

16夏物語/川上未映子

17蜜蜂と遠雷/恩田陸

18異邦人/カミュ

19本屋さんのダイアナ/柚木麻子

20何もかも憂鬱な夜に/中村文則

 

 

※ちなみに毎年読んでいる太宰治の『人間失格』ですが、この小説はすでに殿堂入りしているのでランキングには入れませんでした

 

 

 

 

今年はたくさんの素晴らしい小説に出会えてました

 

本を読むという行為はとても時間とエネルギーが必要になります

しかしこんな確実に効率的に自分を成長されてくれるものは読書以外に無いと思います

『読書は最大の自己投資』

という言葉をどこかで聞いた事がありますが本当にその通りだと思います

 

2019年現在『日本人の本離れ』は加速している印象です

SNSやゲームやYouTubeなどインターネットが普及した現代で『本を読む』という行為には無理があると感じる

残念だけどこの流れは止められないと思う

 

もし自分の2019年小説ランキングを見て

『本でも読んでみようかな』と本屋へ足を運んでくれたらとても嬉しい事です

 

来年も楽しい読書ライフがおくれたらと思ってます

 

《無から有》を生んでしまう小説家って本当に素晴らしいですね

 

 

年末の忙しい時期にここまで読んでくれ

皆さんの貴重な時間を使って頂きありがとうございました

 

華やかなクリスマスが終わって正月へと向かう

静かなこの1週間がわりと好きです

 

 

それではまた!Ciao!